ダイヤモンドは希少だから高価、そんな認識が変わりつつあります。

ダイヤモンドの発掘

ダイヤモンドが初めて発見されたのは古代のインドであったといわれ、その後18世紀まで、ダイヤモンドはインドでしか産出されませんでした。しかし古くから人々の心を惑わせてきた石は、ほぼ16世紀の頃には堀り尽くされてしまいました。インドでの産出が行き詰まりかけた頃、インドにしかないはずのダイヤモンドが発見されたのがブラジルでした。ブラジルのダイヤモンド鉱脈は18世紀の初めに発見され、約一世紀にわたってダイヤモンドの主要生産地であり続けましたが、さらにアフリカの国々でブラジルよりも大きな鉱脈が発見され、その主役の座からは遠のきました。今日では、ロシア、ボツワナ、コンゴ、オーストラリア、南アフリカ、カナダ、アンゴラといった国々で産出されています。

最も美しく輝くカット

ダイヤモンド ブリリアントカット
ダイヤモンド職人たちは、長年、ダイヤモンドはどのようにカットすればより輝くかという課題に向き合って、その技術を競い合ってきました。光が反射して、そのすべての光が再び外に出ていくようになるための正しい角度、さらにダイヤモンドの持つ3つの光をバランスよく輝かせるプロポーション。それを追及して、1900年頃に58面体のカットが登場しました。これがラウンド・ブリリアント・カットです。

世界にたった一つの個性

世界最高のダイヤモンドカッターと称されているガビ・S・トルコフスキー氏はこう語ります。「私はダイヤモンドをカットするとき、いつもこのダイヤモンドはだれのところにお嫁に行くのだろうかと考えながら作業をしているんだ。原石が、どうカットしてほしいか私に語りかけてくる。まさに音楽を作曲するように、最高の輝きを醸し出すようにと心を込めて素晴らしいカットをほどこして磨き上げられたダイヤモンドを自分が手放すときは、いつも娘を嫁に出す気持ちでいる。原石の個性を十分に生かしたカットをほどこすことで、このダイヤモンドは世界にたった一つの宝石になるんだ。」

ダイヤモンドの負の側面

ダイヤモンドを磨くインドの子供たち
宝石に使われる天然のダイヤモンドは、デビアス社の一社独占体制で、量、価格ともにコントロールされています。アフリカの各国の紛争の原因になったり、ダイヤモンドによって武器を手に入れるようになったり、黒人たちに重労働のダイヤモンドの採掘を低賃金で迫ったり、インドの子供たちに重労働の研磨をさせるなど、宝石として実際の歴史を知っていくと負の面が多い点もあります。

工業用ダイヤモンド

ダイヤモンドやすり
一方、宝石に使えなかった小さなダイヤは、工業用途で様々なシーンで活用されています。工業用のダイヤモンドは宝石に比べて非常に安く、身近で、活用用途も多彩です。たとえば、硬い性質を活かしたガラス切り、それからレコードの針、歯医者の歯を削る用具も工業用のダイヤモンドが使われています。そして研磨剤として、微粉末にしたもので光学用のレンズやコンタクトレンズの研磨、超合金の研磨などにも使われます。ホームセンターにいけばダイヤモンドやすりも安価に手に入ります。自動車、自転車などの製品はダイヤモンドの助けをかりますし、冷蔵庫、テレビ、ラジオなど、エレクトロニクス製品を作る過程でダイヤモンドが役立っています。ダイヤモンドの性質を利用して、センサーや半導体の材料として研究が進んでいます。

合成ダイヤモンド

20世紀後半になって、ダイヤモンドを人工で合成することも可能になっています。現在では複数の合成方法が見つかっています。非常に安価に生成できるため、主に工業利用に使われていますが、作ろうとすれば宝飾品レベルのダイヤモンドも十分につくることができます。2012年には1.0カラットの無色や黄色の合成ダイヤモンドの販売を、ジェムシス社が始めています。天然のダイヤモンドよりも低価格で販売しています。

マシーンカット

さらに、ダイヤモンドのカッティング技術は長年職人技として受け継がれてきましたが、21世紀に入り、マシーンカットの新しい時代に突入しています。ダイヤモンドを傷つけられるのはダイヤモンドだけ、と言われ続けてきた伝説を覆す、レーザー光線が出てきました。レーザーの光でダイヤモンドを分割する技術が確立され、コンピューター制御によって思いのままの位置に、まるで鋭いメスを当てるがごとくイメージ通りにダイヤモンドをカットすることができる技術革命が起こっています。今日ではダイヤモンドの大きさや形の特長、さらに内包物のあるなし、あるいは位置までも三次元で読み取り、パソコンの画面上に表示。しかも原石をどのように分割、カットすれば無駄を最小限に抑えたダイヤモンドが完成するのかを計算によって導き出すことができます。またこうしてコンピューター上で作り上げたシミュレーションデータをそのままレーザーマシンに入れれば、その指示通りにダイヤモンドをカットすることができます。

希少性による価値は下がる?

しかも、レーザーによるカットで飛躍的な時間短縮、節約をすることができるだけでなく、レーザーの焦点は大変細かいので、金属の刃で削るよりも生じる塵が少ない、すなわち、切断やカットによるロスを抑えることができます。また塵の発生も少ないので、原石の大きさを最大限いかした裸石が出来上がります。これまでインドの子供たちに労働させたり、北朝鮮の収容所でダイヤモンドの研磨をさせていたということも問題になっていましたが、以上のようなことから、今後ダイヤモンドの価格はこれから下がっていくことも予想されます。

価値があることとは

ダイヤモンドリング
しかし、ダイヤモンドが鉱物の中で最も硬く、唯一の価値を放っていることに変わりはありません。また、職人が一つ一つ心を込めてカットし、唯一無二のものに仕上げたものはもちろん価値があるでしょう。インドの子供たちが重労働を迫られて削ったものや、マシーンカットしたものもあります。一方永遠であることを願って、婚約相手に心を込めて送った指輪に、当事者にとってこれ以上にない価値があることも変わらないでしょう。いったい何が価値があるということなのか。希少であるとされてきたことやイメージ戦略で作り上げられた幻想の価値ではなく、真の価値があることはなんなのか。満両では引き続き「新たな価値」を追求していきたいと思います。