ペルシア絨毯の起源は、アケメネス朝ペルシア(現代のイラン国)にまでさかのぼります。その歴史は非常に古く、3000年前にさかのぼると言われています。ペルシア芸術の代名詞として広く世界に知られており、床の敷物だけでなく、壁飾りやテーブルクロスとしても愛用されています。
ペルシア イラン
ペルシア絨毯は膨大な時間をかけて作られています。
例えば、玄関マットサイズで半年、リビング用の絨毯で4年以上かかります。

ペルシア絨毯

ペルシア絨毯の素材はシルクや羊毛、綿などです。日本ではシルクが高級品として有名ですが、子羊の毛(生後8か月~14か月)で作られた絨毯も高級品として重宝されています。羊毛は、脇腹と肩の部分の毛がより高品質とされ、踏みしめても毛が寝ることがなく、耐久性に優れています。

絨毯のデザインは結びの位置を正確に固定するために、方眼紙に描きます。そして、下絵に色付けし、完成予想図を作ります。デザインの些細な狂いが絨毯の出来栄えに大きく影響するので、細心の注意と高度なデザイン力を必要とします。

ペルシア絨毯のデザイン

ペルシア絨毯は、職人の手により、1つ1つ糸を結んでいくことで作られます。職人は、幾日も織り機の前に座り、糸を丁寧に結んでいく作業を、ひたすら繰り返します。ベテランの職人は1日約5000回、糸を結ぶ作業を繰り返します。1平方メートルの絨毯を完成させるまでに、職人が糸を結ぶ回数は、100万回にも及びます。
このように、ペルシア絨毯を作る際には、糸を結ぶ作業に、最も長い時間を費やします。しかし、このように膨大な数を結んでも、長さにすると1日にわずか数ミリしか織ることができません。また、わずかなズレが完成時の絵柄に大きく影響するため、1つ1つを正確に結んでいくことが求められます。職人の家に生まれた子供は、10歳前後から母親に習って織り始めます。15歳~20歳では、すでにベテランと呼ばれる技術力を備えています。
ペルシア絨毯制作の風景
ペルシア絨毯の最大の魅力である美しい色合いを表現するため、選りすぐりの天然染料が用いられます。シルクロードに生息する植物や昆虫などから染料を採取し、これらを用いて、比類なき美しい色合いに染め上げられます。

茜(あかね) 赤・黄赤 重用される緋色は茜を原料として、根を乾燥させて粉末にしたものを使用。樹齢5~7年が最良とされています。
コチニール 赤・紫 サボテンに寄生する貝殻虫の卵に含まれる色素を利用するため、雄だけが染料となります。2千年以上前から使用されています。
紅花(べにばな) 赤味黄 西アジアで栽培され、その花弁に色素が含まれ、乾燥させたものを挽いたあと溶剤を用いて染媒液がつくられます。
ウコン 黄・黄褐色 香辛料として有名。
藍(あい) 青の染料に適した植物は世界的に稀少。ほとんどインド藍を使用するが、深い青を出すには乾燥して液に浸す作業を繰り返します。

染料技術は、ペルシア絨毯の最も得意とするところです。他の手織りの絨毯と比べた場合、1本1本の糸がしっかりと染まっていることがよく分かります。染色作業は、「この色が無ければデザインもない」と言われるほど極めて重要です。染色の技法は、世代から世代へと受け継がれ、門外不出の家宝とも呼べるものです。

ペルシア絨毯の染料
「天国の色」「真実」
「太陽の色」「健康の喜び」
ローズ・ピンク 「神の英知」
オレンジ 「信仰心」「愛国心」
「慈しみ」「平穏」
「不滅」
ペルシア絨毯の染料
シルクロード

その昔、ペルシアはシルクロードの重要な都市の1つでした。絹や漆器、磁器が交易品として重宝される中、この美しいペルシア絨毯も大きな存在感を放っていました。

さて、日本にペルシア絨毯を普及すべく、組織が設立されたのは意外に最近で、20~30年前のことです。では、日本で1番初めにペルシア絨毯を使った人物は誰でしょうか?

皆さんご存知、あの邪馬台国の女王卑弥呼が最初の人物と言われています。ペルシア絨毯について記載されている最も古い文献は「魏志倭人伝」です。その中で、魏の皇帝がお礼として絨毯と思われる敷物を贈ったと記されています。この頃、ペルシア絨毯の見事な模様と色合いは、装飾品として高い評価を受けていました。

女王 卑弥呼
では、日本に残っている最古のペルシア絨毯は、現在どこにあるのでしょうか?
ペルシア絨毯 祇園祭

実は、京都の祇園にあります。日本三大祭として有名な京都祇園祭りにおいて、ペルシア絨毯は、山車の飾りとして用いられています。山車に使われているペルシア絨毯の模様は、一般的によく知られているお花の模様だけではなく、ラクダやピラミッド・旧約聖書の絵柄も描かれています。千年の歴史を誇るこのお祭りに用いられる山車は、その華麗さから、動く芸術品と呼ばれています。この山車を作る上でも、ペルシア絨毯は、欠かせない存在となっています。

その他、歴史上の人物では、派手な装飾や彩りを好んだ豊臣秀吉が、ペルシア絨毯を陣羽織として愛用したと伝えられています。この陣羽織は身にまとう為にペルシア絨毯を裁断して作られました。現在は京都の高台寺に残されています。

ペルシア絨毯 秀吉 陣羽織

永い歴史と交易交流のなかで、ペルシア絨毯は歴史ある美術品として、また愛用し続ける実用品として活躍をしてきました。絨毯は使いこむ程に味が出て、完成したばかりのものよりも長年使われたものの方がよい品質になると言われています。ペルシア絨毯は完成までの過程に沢山の職人が関わり、膨大な時間をかけて作られています。その職人たちが込めた多くの真心が形となり、私たちの元に届けられます。親から子、さらには孫の代まで長きにわたり受け継がれていきます。